開発の背景

高齢化率の著しい日本では、高齢者を取り巻く様々な問題が議論されていますが、中でも「自分らしいお葬式」の流行や終活セミナーの盛況にみられるように、人生の終焉(エンド・オブ・ライフ)をめぐる動向に対して、高い社会的関心が寄せられています。

 

これまでのエンド・オブ・ライフに関しては、医療現場を中心に、事前指示書(AD: Advanced Directives)や人生会議(ACP: Advanced Care Planning)など治療方針に関わる側面について多くの議論が行われてきました。その一方で、「終活」での中心的な関心は、「葬儀をどうするか?」「墓をどうするか?」といった社会文化的な側面でした。

 

またエンディングノートといったツールや終活セミナーなどは各地で盛んに開催されていますが、高い関心にもかかわらず、実際にそれを行動に移す人は多くない現状があります。また介護や終末医療、葬儀の希望が叶えられるかどうかというエンド・オブ・ライフをめぐる問題は、自分一人完結するものではありません。むしろ遺される人とどのようなコミュニケーションを行うのかが大変重要です。しかし、これまでのほとんどのツールでは高齢者自身の希望を表明することにとどまってしまっていました。

 

そこで地域に在住する高齢者への実証的研究を通じて、コミュニケーションを活性化させるための実践的なツールを開発しました。なお本研究はJSPS16K13477の助成を受けた研究の一環として実施されました。

 

またその後、JSPS21K03012の助成をうけて、ワーク内容の改善と介入効果の検証(臨床試験登録番号UMIN000049179)を行いました。

ワークの内容

ワークのねらい

  1. 延命治療の希望や希望する葬儀の形といったエンド・オブ・ライフに関わる特定の事柄について、参加者が自身の考えを語り、それを周囲の他者から受容的に受け止められる経験を通じて、自身のエンド・オブ・ライフに積極的に向き合える
  2. これまでの人生を振り返り、意味のある人生だったと捉えることができることで、自らの死に対して向き合える
  3. ゲームを使うことで楽しみながら参加できる

 

ワークの概要とルール

 

関連発表・論文

  1. Kawashima, D (2023). Attitudes toward the end of life among Japanese older adults: An overview of the empirical findings and the practical tool. A HOPE Nurses Conference: The HIV Online Provider Education Program and Harvard University Center for AIDS Research, Cambridge (online): USA.
  2. Kawashima, D. (2023). Life-Ending Work. Pre-Meeting Conference of the 33rd International Work Group on Death, Dying and Bereavement Meeting: Grief Literacy: From Theory to Action (Halifax, Canada).
  3. 川島大輔・建部智美 (2023). 高齢者を対象としたライフエンディング・ワーク実践の効果検証ーランダム化比較試験ー 日本心理学会第87回大会発表論文集(神戸国際会議場・神戸国際展示場)
  4. 川島大輔・古賀佳樹・葉室亮介 (2019). 高齢者のエンド・オブ・ライフケアへのアクションリサーチ(2)ーライフエンディング・ワークの開発ー 日本発達心理学会第30回大会(早稲田大学)
  5. 川島大輔 (2021). 死から逆照射される人生の意味-死生心理学からみた生きがい- 生きがい研究, 27, 55-69.

 

謝辞

 ライフエンディング・ワークの開発にあたってご協力をいただいた、仲田光希様、葉室亮介様(一般社団法人ライフエンディング・ステージあさひ)に記してお礼申し上げます。